旅の幕開け
冬の暗い朝、鳥達もまだ寝入っている。
遠くから新聞配達のオートバイの音が近づいてくる。
自分の足音が、清楚な住宅街に響く。
ガレージを開ける音に神経を使いながら、
車のドアを開け、
ドライバーズシートに腰を滑り込ませる。
狭い、そして革のシートが冷たい。
ついつい腰を浮かしてしまう。
シートベルト、手袋、眼鏡をきちんとかけた。
僕は仕事で金沢・仙台・名古屋・大阪くらいは
車で行くのが好きだ。
さて出発。
エンジンのスタートボタンを押すまでのこの時間は、
長い物語のイントロの様だ。
エンジンの音の響きが体に伝わる振動。
全て人間の本性をくすぐるかの様だ。
車の幌の留め金具を外し、
オープンのボタンを倒す。
まるで今日の舞台の幕開けの様だ。
主人公は僕・・・いや、この車かも知れない。
それは秋から冬にかけて乗る物と信じて止まない。
屋根が無いから、寒い。腹が冷える。
故、カイロをお腹に。
そして革のコート。冬になればムートン。
極寒となればロングの厚いダウンコート。
帽子は飛ばされない様に、ループを付け襟に留める。
帽子にも変化がある。
まずはキャップ。続いて耳カバーの付いた厚地のキャップ。
最後は昔の飛行機乗りが被る、中にボアの付いた、
耳まで隠れ、顎でベルトで留める革の帽子に
ゴーグルを掛ける。
もちろん季節により手袋も変化していく。
しかし寒い。
この様なことを書いて、春になると
オープンカーはTシャツで、と言い出しそうな気がする。
今は夏近し、秋の楽しみを
この様に空想するのも良いかも。
今、彼はガレージの中でホコリまみれになり、
寒くなるのを待っている。
(透明水彩・パステル 525mm×447mm)











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